どうして私はこうも君を想ってしまうのだろう。
私では不釣り合いなのに。
[年の差が憎い]
年甲斐もなく、君に釣り合おうとしていた。若者向けの服装に手を出して。
だって隣を歩くのがおばさんなんて嫌でしょ?10歳も年上じゃあ、いいおばさんよ、なんて。
「大丈夫だよ」
君はいつも言ってくれる。今は本心だって分かっているわ。でもいつまで続くかしら?
恋なんて沢山経験してきたし、裏切られたことも幸せだったこともあった。
でも君はまだ子供(オコサマ)。情だけではどうにもならないことを知らない。
手を伸ばしても届かない星のように、君には届かない。眩しくて目を瞑ってしまうくらいに輝く。
私は海底の石ころ。光に弱いのよ。
だから君にも弱い。
「買い物付き合って」
君からのお誘い。私は目一杯お洒落するの。10代に戻った感じ。
「好きだよ」
私も。そう言うのは簡単だけど、心を込めるには難しい。直ぐに返せないのが心苦しくて。
どんなときも嘘にならない愛が欲しい。君と別れ際、背中を見つめて思う。
毎日のメールも、寂しいときの電話も、私からばかりだということに気付いた?
メールを切るのも私、続けるのも私。
珍しいけど我慢出来なくなって、
「声が、聞きたくなって」
って言うのも私。
君は確かに私を好きでいてくれてるけど、先の見えない愛なんだ。こんなに好きなのは私だけなのかもしれない。
君からの誘いも、私は君ばかり見ていたの知らないでしょ?君が私を見てくれないの気づかないとでも思った?
「やっぱり君には不釣り合いよ」
眉を下げた私は君に告げた。そしたら君は泣きそうな顔をして、私を抱き締める。
なんでそんな表情するかな、ほっとしたじゃない。
「そんなことない。なんでそんなこと言うの?」
「思っただけ」
馬鹿みたい、そう言った君は私の肩に顔を埋めた。なんだか小さく感じたのは年の差なのだろうか。
「ねぇ、」
「嫌だ。俺は君のこと好きだよ」
別れよう、なんて言えないか。私はそっと君の背中に腕を回した。
「分かった」
「え?」
顔を上げた君に伝える。
「契約、ね」
「契約?」
「そ。1週間……ううん、10日間だけ、時間をあげる。」
「うん」
「その間はまだ恋人」
「?」
「だから、もう一回私を落としてみせてよ」
ニヤリと笑った君は、私に軽いキスを落として言った。
「今すぐにでも」
気付いてないかもしれないけど、もう落ちてるなんて。その自信ありげな顔に、その言葉に。
だけど、教えてやらないんだから。
(教えるのは、大人な恋の仕方)