どれだけ待てば、君は気付いてくれるのかな。
雨の中、何時間も待った馬鹿な男に。
[雨に一人]
君からの誘いに一喜一憂。
「俺も行っていいの?」
暗に俺も行くと伝える。そうすれば、少し頬を赤らめた君は頷くんだ。
だから勘違いしたんだ。君のことを俺の良いように。
でも違ったね、約束の日君は現れなかった。決して分かり難い場所が待ち合わせじゃないのに。雨だったからなのかな。
はじめは風邪か何かだと思った。でもいくら携帯を確認しても、『新着メールはありません』。
昼待ち合わせだったけど夕方まで待って、そして俺は傘を閉じて帰った。土砂降りだったけど。
その後、雨に濡れた俺は勿論風邪を引いて寝込んだ。そのとき来たメールに、俺は思わず苦笑いした。
「大丈夫?」
それだけってアリだと思う?君がどこに居たのとか、もう正直どうでもいいからさ。せめてごめんくらい聞きたかったな。
「大丈夫」
その一言だけ返して、俺は布団にくるまった。
夢の中でも君を待っていたよ。雨の中、一人きり佇んでいるのに、君は知らない人と笑いあっているんだ。
名前を呼んでも、隣にすれ違っても、気付かないなんて悲しいね。
売り物のような作られた優しさより、慰めより、君の一言だけが欲しいのに。
そう望んでもきっと難しいんだろう。君に俺の気持ちの欠片を伝えても、君は理解出来ないかもしれない。
だからもう良しとするしかないのかな。
夕焼けに照らされ赤く染まった部屋が、どうしても広くて寂しく思えるのは気のせいだよね。
明日が来たときに、この悲しさがなくなっていますように。
待ちぼうけな昨日も大切な思い出になりますように。
そうやって淡い恋心を抑えこんだ俺は、眠りにつく。
声が聞こえるんだ。でも君の名前は呼べないんだ。俺の名前じゃないんだ。
どれだけ待てば君の姿が見えるんだろうか。
雨の中、何時間も待っているのに。
お願いだから馬鹿な男の名前を呼んで、「遅くなってごめんね」と駆け寄ってきてくれ。
夢の中でもいいから。