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もしあの日雪じゃなかったら、俺は電車で帰りはしなかっただろう。 
もしあの日電車で帰らなかったら、君には会えなかっただろう。 


[雪のあの日] 


もしも。 
捨てた選択肢の先を思いやって、俺はほっとする。そのもしもの先は、君の居ない世界だから。 
そしてその世界の俺を憐れむんだ。なんて寂しい世界なんだろう、って。だけど俺は寂しいなんて思わないんだろう。そう考えると怖いよ。 
君に会ったあの日から全てが変わった。もしもなんて今まで、考えたことも無かった。ただ何も考えずに徒(いたずら)に生きていただろう。 
俺はこの出会いを『奇跡』と呼んでもいいのかな。出会いだけで奇跡なんだから、俺はそれ以上は望まない。『運命』なんて望まないから。 
だけどそんな気持ち、強がりに決まってる。 

もし君に会わなかったら、俺は今頃どうしていたかな。雪も降ってなくて暖かくて、きっと心も温かかったかな。 
『奇跡』だけでいいなんて思わず、その先にと辛く思うことも無かった。 
流されるように、雪のような一晩で溶けてしまうような、ただの女との夜だけ過ごすことになったのかもしれない。 
もしあの時女に「雪だからまた今度」なんて言わなかったら、君に会えずにいた。それが良いことなのか悪いことなのか分からないけれど。 

消したい記憶に君が居るから。だから俺はこれからの記憶を、あの日からの記憶を消すことが出来ないんだろうね。この先に例え辛いことがあったとしても、君の温もりを消すことは俺には難しい。 
「友達だよ」って言葉に傷付いても、君が別の人と幸せそうに笑っていても、君から恋愛相談をされても。それでも俺は心の中で君を想いながらも、優しい笑顔で頭を撫でてあげるんだ。 
それだけで君のそばに居ることが出来るなら安いものだと思うことにする。 

あの日と違って晴れている今は、君はどこに居るのかな。晴れてるのに俺の気分は雨で、凄く寂しいんだ。 
隣に知らない奴が寝ていても、そいつに「好き」と言われても満たされない。そんな空虚な心になってしまった。 
時間を巻き戻して君に会わないようにするのが良いのかな。それとも会えた奇跡だけで満たされるべきなのかな。 
同じ夢や同じ空、同じ癖で笑いたいなんて随分、虫が良い? 

もしあの日、なんて叶わない未来を作り上げたとしても、幸せになんてなれないのは知ってるのに。俺はそうやってしか自分の幸せの道を見つけることが出来ない。 
『奇跡』以上の奇跡が起こればいいのにって、ずっと夢見てる。 


もしあの日雪じゃなかったら、俺は電車で帰りはしなかっただろう。 
もしあの日電車で帰らなかったら、君には会うこともなかっただろうに。