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同じ季節をたった2回過ごして、それでさよならなんて。 
最後は、俺があげた思い出全部消していけたならいいのに。 


[明日が見えない] 


何も言わないのは狡い人だよね。だけど君の涙は見たくなかったんだ。 
知ってる、君は俺のそばに居ないってこと。だけどその温もりを俺は、忘れることは出来ないんだ。 
同じ空に手を伸ばして、「綺麗だね」って言うの。毎日これが最後かなって思っていたよ。俺に明日が来ないかもしれないなんて、君はちっとも思わないんだろうけどね。 
手を握って、人混みに紛れないようになんて付け加えて。君と買い物に行っても、君の楽しそうな横顔の思い出ばかりだよ。明日なんて無い、そんな勢いで痛いくらいに焼き付けた。 
ずっとそばで、君が笑ってる姿を見たかった。君が誰を想って笑っても泣いててもいい。何気ない会話にも胸が痛んだなんて、そんな事実押し込んで。 
だけど最期は容赦ないんだ。こんなちっぽけな俺の願いすら、神様は叶えてくれないんだよ。俺は何もしてないのに。ベタだけど「なんで俺が」って思ったよ。今はちゃんと受け止めてる。 

思い出は何一つ落とさずに俺は、あの青い空の向こうまで持っていくから、君は全て忘れていいんだ。そして幸せになって欲しいと願うよ。 
俺が居たこと、俺が与えた愛、俺が刻んだ温もり、俺と一緒の思い出も全部消して。 
「また明日ね」 
そう言って友達と別れた十字路、俺は過去に歩き出す。 
君はもしかしたら、今日出来なかったことは明日やればいいやって思うかもしれないけど。明日が来るなんて保証ないのだから悔いなく生きて。 
それだけが俺の望みだ。 


ただ一つ、君に本当のことを言えなかったことだけが心残りだったよ。もう二度と会えないって分かっていたら、もっと沢山笑って、喋って、愛してあげられたのに。 
もう君が俺の名前を呼ぶ声も聞けない、呼んでも返事をしてあげられないんだね。君が手を伸ばしても、その手をとれない。泣いても拭えない。 
ごめんね、もう行かなきゃいけないみたいだ。最後にさ、我が侭いいかな。 
「ずっと笑ってて」 
涙拭えないなんて俺辛いじゃん。 

君には明日が来ますように。 
幸せな明日が。 
誰かに抱きしめて貰える明日が。 


俺があげた思い出全部消していくよ。 



『――さよならとありがとう。 

From ―― 

P.S. 
全て消していくけど、きっとこの手紙は俺が生きていた存在していたという証明になるんだろうね。』 

(勝手だ、と泣きながら言う君の声が聞こえた)