君は俺のことを『友達』だと言った。
俺は君のことを『偽善者』だと言った。
[ぼっちの僕とひだまりの君]
「お前のこと、嫌い」
そう言ったときの君の顔、良く覚えてる。だって今までに見たこと無いくらいに、傷付いた顔していたから。
「ごめん」
申し訳なさそうに眉を下げて言うんだ。違う、君は悪くないのに。
君は昔から言っていた、「偽善者は嫌い。だから偽善的なことなんて出来ない。」でも俺にはその君の行動すら偽善的だったんだ。
だってあまりに形式的。漫画や小説の中のような爽やかさと優しさを持っていたから。
そんなところ俺には無かったから嫉妬したのかもしれない。
君が背を向けて教室に入って初めて、酷いことを言ったと分かった。そして後悔した。
こんな性格だから友達居ないんだ。
君は俺と違って誰とでも仲良くなれる。皆に優しくて、かっこよくて。
ちょっと着崩した制服も、程良く着けられたアクセサリーも、格好いいお洒落な私服も、君は何でも綺麗に着こなしていた。
そんな君に叶う筈もない俺に、毎回「似合ってる」って自信を付けさせてくれたのは君だった。
君のおかげで友達が増えたんだ。君のおかげで好きな子と知り合えた。なのに俺はツンとしてしか居られなかった。
それでも何で君は受け止めてくれていたんだろう。今じゃ聞けないことだけど。
一人、また一人。俺の周りから友達が消えて、一人ぼっちになった。正確には君が居たけど、俺が殻に籠もったんだ。
ずっとそばに居てくれたのにね。「俺ら友達だからな」って言ってくれてたのに。
勿論君は人気者。あっという間に君は色んな人に囲まれて笑ってた。ああ、俺は邪魔だったんだって思って凄く凹んだ。
すれ違っても、ちょっと気まずそうな表情で挨拶するだけ。寂しくなったと思うけど仕方ないよ、俺の所為。
もうあの頃には戻れないのかな、大勢でくっ付いて笑っていた日々に。君がお母さん気質を発揮して皆の面倒を見ていた日々に。
でもきっともう戻らないね。だって俺が言ってしまったから。
「嫌い。関わらないで」
だからそんな顔しないでよ。裏切られたような傷付いた顔。本当は仲良くしたかったんだ。でもこんな俺に嫌気が差した君に裏切られるのが怖くて、自分から切り出す。卑怯だよ。
「ごめんね」
最後まで優しい。皆に優しい君が嫌いだ。誰も平等で、誰が嫌いとか表に出さない君が嫌い。
「ありがとう」
この言葉は届かない。君は居ないところに俺は居るから。会えなくなる前に友達全員に言いたかった。
せめてもう一度、お兄ちゃんみたいな笑顔で頭を撫でて欲しかった……なんて我が侭だね。
君は俺のことを『友達』だと言った。
俺は君のことを『友達』だと、
言えなかった。