耳を軽く劈(つんざ)く。
両耳を押さえても痛みは消えない。
音が徐徐に歪んでいく。
篭った音が嫌いになる。
いっそ無音の世界へ。
目を軽く刺す。
目を閉じれば深い海へ沈む。
視界が徐徐に歪んでいく。
二重の物体が嫌いになる。
いっそ真暗の世界へ。
手は何も掴めずに、掴めたはずの物さえ落とす。
力はもう入らない、それは体が枷で留められてるから?
この両手から現在(いま)が零れる度に、
恐怖と諦めが押し寄せる。
ニヒルな笑い。
欠けた何かに共鳴していた。
だけどソレはどこにもないらしい。
走り回れる今まで行けるところまで行ってみた。
それでもやはり見つからなかった。
今じゃビビッドな寝具の上で、望郷の念を抱くしかできないらしい。
一歩たりとも動けない鳥籠で、はて、
何を求めればいいだろう。
少し差す日の光と、少し見える空と木々にシャッターを切る。
急加速した沈む速度。
嘔気より鈍痛の方が辛いかも。
でも何も言えずに身体は泡となってしまう。
口すら聞けなくなったようだ。
ぽっかり空いた島のような二つの席と、
いずれ空くだろう、飛び石の席。
それらに挟まれた人はどう思うだろうか?
添えられた花の色はナニイロか見えない。
もう何イロかミエナイ。
He or She presumes on me.