メランコリック ルバイヤート

一.

浴びるように飲める酒も この部屋には無かった
だから浴びるように飲んだのは 自分への侮辱の言葉
それを飲み込んで 俺は腹でも下したろうか
いや どれほど飲んでも酔えないのだ


二.

暖かい日の空は 晴れているとは限らない
明るく接しているときは 幸せや楽しいとは限らない
不安に散った紅梅 気分は急な勾配
季節の匂いは無意識 己の願いは有色(ゆうしき)


三.

いつものように まあいいか、を繰り返して
いつでも変わらない仮面で 交差点を横切る
俺の哀しみを上手く隠しながらも
人混みに要らないもの棄て 生きていく


四.

吐き気ばかりで ちっとも良くならねぇ
酔っ払いの妖精は 酔っ払いを介護して
ミイラ取りがミイラになった?
結局どいつもこいつも 眠ってやがるのさ


五.

偉そうに大人は 我が正しいと言い張る
正しいのはお前らではない お前らの子供である
純粋が故に 全ての物事を客観的に捉えることが出来る
正しいのは お前らの子供なのである


六.

どれだけ見ぬ郷を思い描いても
心の理想郷を埋める手助けにはならない
どれだけ聴かぬ唄を思い描いても
心の理想論を埋める手助けにはならない


七.

何度も書いて 何度も書き直して
送信ボタンも押せずに その度溜め息繰り返して
結局は 「内容は失われますが よろしいですか?」
僕は今までで最高の勇気で はい を押した


八.

吐き出せる溜め池は無く わたくしは自分の身体に
口々に吐きかける戯言は 強酸性の危ないもの
わたくしはやがては 存在まで溶けるまでに
その屈辱的懺悔に 蝕まれていくのです


九.

一歩歩き出す度に 足元のブロックが落ちていく
ブロックが落ちる度に 僕は孤独になっていく
孤独になっていく度に 逃げ場が無くなっていく
逃げ場が無くなった時に 世界は終焉のベルを鳴らす