自己愛
と
狂愛


わたくしはあなたに愛される為に
こうして生きているのではありません

意味も無く 真っ暗闇の中
ただ見えない水掻きで 濁った海水を
脇へ脇へと押し流し 掻き分けながら
絶望を知らないようにしているのです

あなたに愛されたいが故の行動では
あまりに幼稚で拙い行動でしょう

帰り道すら分からないわたくしを
あなたはハナビラを置いて 何処までも示してくれる
それを頼りにするばかりでは
もう駄目だと とうの昔に悟っているのです

つまらぬ妄想に悩まされて
これ以上生を狂わせるのはおよしなさい

手足のもぎ取られた豹でも
翼を焼かれた鷹でも
平衡感覚の狂った猫でも無い
あなたはあらよと自由になるのです

わたくしのお遊びは楽しいですか
わたくしはちっとも楽しくありませんわ

記憶をなくしたような方に
情けをかけるような性格ではありませんもの
それならばあなたはこれから
どうなさるおつもりなのかしら

少しだけ聞いてもいいかしら
そうしたら すぐに楽にして差し上げる

ぽたり と落ちる雫を目にすれば
あなたは これは何 と聞くのでしょう
点滴の中身は教えませんわ
わたくしと神さまの約束ですもの

それでは 目を瞑り後ろを向いて
ほんの僅かな痛みは無視して下さい

ほら もう終わりましたよ
わたくしとあなたは晴れて無関係
何処までもお行きなさい 空の果てまで
あなたにはわたくしにはない 虹色の翼があるのです

寂しくなんかありませんわ
どうしてわたくしが寂しく思わなければいけないの


わたくしはあなたに愛される為に
こうして生きているのではありません

わたくしは自分が大切なのです
わたくしは自分に正直でいたいのです
わたくしはあなたに幸せに生きていただくために
自分を捨てることすら 厭わないのです

汚い自己愛と 綺麗な自己犠牲
わたくしのエゴの行使の為の あなたなのですから


（嘘、
本当はあなたに愛していて欲しいだけ）