冬とチョコレート、又の名を「告白」

女の子が一年で一番緊張する日。甘ったるい匂いに世間は包まれ、苦い顔も緩い顔もそこらに溢れる。そして女の子も男の子も関係無く紙袋にいっぱいのお菓子を持ち歩く。
ああ、甘ったるいね。
「あんた、チョコあげないの?」友達のその声に、苦笑いではぐらかす。本当はあげたいのも山々だけど、彼は沢山から貰えるもの。義理も本命も。今更私の本命が増えたところでどうともないはず。
「私はあげるよ。」
「頑張って。」友達もこのイベントにかこつけて告白でもするらしい。私はただ微笑んでそう返す。
だって嫌だもの、騒いでる女の子たちのと同じ紙袋に入れられて埋もれていくの。

「これあげるよ!」その輪に入る勇気が無い私。あの子らと同じように出来れば楽なんだろうな。
出来ないからね、でもあげたいから、放課後にそっと入れようかなって思うの。ああ、バレたときに恥ずかしいわ。
ことん、と小さく音を立てて机の中に入れる。どうか少しでもあなたが愛されますように。なんて心の中で語りかけて。
そして私はひっそりと帰宅する。


女の子たちの浮かれ騒ぎもあの一日だけ。次の日からは何も無かったように過ごすの。
特にクラス内で変わったこともないし、新たにカップルが生まれた様子も無い。取り越し苦労、杞憂、その他。
彼も以前と変わらない、毎年アレだから慣れてるのかもね。だから私も忘れてたの。チョコなんてあげたっていう事実を。


馬鹿じゃないの?地味で目立たなくて、きゃっきゃしてる友達の居ない私にそんなことしたら、他の女の子の視線が痛いじゃない。
私が彼にチョコを渡してから一カ月後のイベント。日本が作った下らない、私の嫌いな日。
「ねえ、良い?」漫画みたいな呼び掛け方。視線痛い、痛いから早く出ようよ。私は悪いことしてないからね?
「どうしたの?」私から渡しといてちょっと迷惑そうな顔で返事する。とりあえず教室から離れて特別教室へ。でも女の子たちの一部はそこら辺に隠れて聞いてるんでしょ、きっと。
「こないだはチョコありがとう。凄い凝ってて美味しかったよ。料理得意なんだ?」ああ、意外だった?女の子らしくないと思ってたんだ。
「それは良かった。料理好きだよ。」なんだかんだで会話出来ちゃう自分凄い。緊張するかと思ったら意外に違ったみたい。
「そっか、それなら下手すぎて不味いかもしれないな。でも受け取ってくれる?」何それ女の子。彼が差し出したのは、可愛らしくラッピングされた箱。一瞬でお返しのチョコだなって分かるわ。私のより可愛いじゃない。
「ありがとう。でもどうして……?」
「好き、なんです。」馬鹿じゃないの?何で私なんか。嬉しい、でも嫉妬が辛いわよね。
「ありがとう。」本命だもの、拒否する理由があるかしら?
宜しくね、って右手を差し出せば、パッと明るく笑った彼がその手を握った。
ラッピングを解いて、綺麗に形作られたチョコを、ほいと口に入れる。甘い味が口いっぱいに広がって、この告白が現実味を増した。
「美味しい。」
「良かった。」彼の顔を覗き見たら、思わず照れてしまうような笑顔。これが現実なんだって、舌の上に残るチョコの味に感謝した。

「好き、」
「え?」
「このチョコが。」
「なんだよ。」
笑い合う。告白とチョコのお返しに驚いたから、ちょっとだけ仕返し。