白い部屋
四方八方白塗りの壁。
ふわりふわりと漂う意識を
もっと固定させたくても無理。
鮪のように止まらない。
ぐるりぐるりと回っていく。
 
これは何?
おれを取り囲む白い世界。
上下左右関係無いから
浮きも沈みもしないなんてね。
 
座ってるのか立ってるのかすら分からない。
座ってたら後ろに引っ張られて
そのままどこまでも墜ちていく。
 
 
がたんと鳴るのは
何が倒れた音?
ぷちんと鳴るのは
何が切れた音?
 
染み一つない真っ白な部屋で
「どうしておれはひとりでいるの?」
 
 
紫陽花の鮮やかな紫でも
薔薇の生々しい紅でも
一筋だけ描かれさえしていれば、
きっとこんなに窮屈にも感じない。
 
パレットでも持ってきて
おれの好きなように塗ってやろうか。
さて、
何色にしようかな?
 
 
おれがこの白の眩しさに凍てつく前に、
鮮血の色に塗ってやろう。
事切れる前に、
この白い部屋から逃げ出して。