憧れの里
そよ風が緑の草を揺らす
飽くほどの薔薇と
巡らされた蔦
程良い温もりが身体を包む
……此処は、憧れの里
 
 
片手に数百年前の詩集
貴方は何を思って書いたのだろう
清い澄んだ空気の中
欲しい言葉を吐き出してきた
……此処から数キロ離れた先で
 
 
暗褐色(セピア)な景色に見えたのは
今と変わらぬ故郷(まち)の姿
私には見えない何かを
敏感に感じとったのだろう
……撓(たわ)わに実った果実の下で
 
 
遠くまで続く寂しげな道は
小さな町を通り抜ける
今は未だ帰るまいと
私も故郷に想いを馳せる
……古ぼけた小さなブランコの上で
 
 
闇雲に探すのではない、ぼーっと空を見ていたら
貴方の見ていた言霊が見えた気がした
すぐさま筆取り写してみたら
息を呑むほど美しい妖精
……あら、此処で何をしているの?
 
 
水の音と木の葉が擦れる音
知らない音も言葉も場所も沢山あるから
直ぐにまた見知らぬ町へ
私は永久の旅人
……其処は、憧れの里