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青い草原と
白黒(モノクローム)の空の下、
 
道化師(ピエロ)は常に男の傍に。
ぽつんと佇む墓に横たわる男の。
 
 
男「貴様はいつまでそこに居るのだ」
道化師「御前が死ぬまで」
 
道化師が返事を返す度に、
地球上の何処かで命は失すという。
 
道化師「天使にはなれない、悪魔にもなれない。私は私にしかなれない」
 
男「ならばそれで何が悪い。数百年以上も此処に居るより良いじゃないか」
 
道化師は声を出さずに笑った。
何処かでで命が海に帰した。
 
道化師「しかし御前の最期を看取らねばならないのだ」
男「もう死んでいるのにな」
 
 
数百年以上前に血に塗れて息絶えた男は
寂しすぎる死後を送る。
 
道化師「死にもせず、生きもせず、ただ煉獄をも彷徨うことも出来ずに」
 
男「ウェルギリウスが天国へ案内してくれるだろうか?」
 
男も声を出さずに笑った。
何処かで命が産声を上げた。
 
道化師「ウェルギリウス?御前、それはただのベルゼブブかもしれやぬのに」
 
男「それがベルゼブブならば、俺は疾うに死んでいるだろう?貴様と違って悪魔だからな」
 
道化師「判らぬ、ファウストの様に暫くいたぶられるかもしれんぞ」
俺「それはそれで良いかもな。今と変わらぬ」
 
 
地獄からも天国からも溢れ、
その受け皿の煉獄からも溢れ、
嗚呼 男は何処に行くというのか。
 
男「嗚呼、俺は何処に行くというのか」
 
道化師「手を取れ。私が良い場所に連れて行ってやろう。そうさな、神の居る場所が良いかな」
 
男「さはれ、俺はこのまま寝たいのだ」
 
道化師「御前、ずっと寝てきたろう。この数百年で業(カルマ)は清算された」
 
男「ウェルギリウスでもベルゼブブでもない、ただの道化師だが、それも心憎し」
 
男はすくりと立ち上がると、
道化師の手を取り歩き出した。
 
 
道化師「行く先は天国か、地獄か?その二極である」
男「願わくは、天国」
 
 
——道化師は男を送り出した後、
再び別の、道化師に魅入られた者のかたへと。
死に神に、悪魔に、天使に、
見捨てられた哀れな者たちの、——