幸せと孤独の二元論
携帯が鳴った。
 
「もしもし?」
『なあ空見て?』
 
遠ざかる空は、
 
『今どんなん?』
 
貴方の言うような、
 
「薄く曇ってる」
 
青空も、
 
『そか、こっちは綺麗に晴れててさ。見せたかった』
 
幸せも、
 
「なんで電話したの?」
 
不器用な恋の行く末も、
 
『この空見てたらな、君の笑顔が思い浮かんだから』
 
何も見えないけれど。
 
「ありがとう」
 
無邪気な声を聞けば、
 
『一緒の景色見たかったのになあ』
 
同じ空の下で生きていると実感する。
 
「この距離だから無理だよ?」
 
貴方が、
 
『そうだよな……結構離れてるもんな』
 
一番愛しく思う人でも、
 
「うん」
 
一番大切な人でもなく、
 
『じゃあ今度一緒に!』
 
この自分を選んでくれたことが、
 
「楽しみにしてる!」
 
とても嬉しく思えた。
 
 
『蒼さと光が目に沁みるなあ』
 
貴方の空のように、
 
「そんなに?」
 
青空も、
 
『ああ。』
 
美しさも、
 
「見たかったな、貴方と同じ空を」
 
透明さもないから。
 
『うん』
 
貴方との距離を感じて。
 
「切な——」
 
貴方と世界が違うのだと、
 
『泣いてる?』
 
無性に思い知らされた。
 
「ううん、大丈夫」
 
手を伸ばしても届かない未来。
 
『ごめんな』
 
貴方はしっかり掴みとって?
 
 
「じゃあ、また」
 
幸せと、
 
『うん、またな』
 
孤独の、
 
「…… 、」
 
二元論。