同じ日常でも、僕らはそれを望むんだ。
つまらない。
溜め息混じりに口にすれば、後悔が押し寄せる。
つまらなくて良いじゃないか、普通の生活なんだから。そう自分に言い聞かせて、立ち上がった。
外を見れば、寒そうな天気だった。枯風が残り僅かな黄色い葉を揺らす。
まるで身震いしているようだ。
そう思ったら、自分まで寒くなってきて身震いした。
室内で環境も良いはずなのに寒いのは、心に隙間があるからだ。なんて普段は思わないセンチメンタルな言葉を心に説いて。
秋の所為だ。冬も近づいて閑散とする景色の所為だ。
何を慌てて自分に言い訳するのか、自分でも分からぬままに呟いた。
幸い人はいない。皆出払っている。つまるところ、留守番なのだ。
この気持ちを気付かれずに済むといえば幸いだが、そもそもこんな気持ちになったのは人が居ない所為かもしれない、と再び空を見る。
早く帰って来ないかな、と大切な人を待ち焦がれる気分でいた。
ただの日常は、僕らにとっては大きな幸せだった。
変わらないことは、僕らにとっては大きな変化だった。
汚れた心で純粋な志しを目指すことは、僕らにとっては大きな壁だった。
——だけど僕らは、一緒に居た。一緒にいれば何でも出来ると気付いたのは、皆と一緒に居たからだった。
幸せだったんだ。
きっと、僕らは。
目に見えぬ絆を抱いて、汚れた翼を重ね合って。
そして他人が嫌う日常を、貪欲にも欲しがった。手に入らないと知って尚。
否、知っているからこそ、望んだ。
少しの、極僅かな幸せが大きく思えるから。
笑って
泣いて
怒って
喧嘩して
慰め合って
喜んで。
同じ空間と時間を共有するだけで、充実した毎日になる。
例えそこに、悲しみしか残らなくても。
僕らはそれを希求する。