贋作
思わず反らした瞳の中。真っ直ぐ僕を射抜いていました。
水に映る月の様に、貴方の瞳の中に僕が居ました。
僕は、君に映った僕を見ました。
でもそれは、僕であって僕じゃありません。貴方の望む僕じゃありません。
貴方の求める僕は、居ないのです。
目の前の者は贋作。ニセモノ。空想。
ほら、手を伸ばしてみて下さい。僕の核には届かないですから。
触れるって?
無理ですよ、それは只の飾りだから。
僕の身体と偽った鎧だから。
 
 
微熱が運んだ雪は、白くて甘くて美味しいでしょうか。
貴方とその下で共に居た季節がやってくる。
偽物だけれど、冬の寒さと貴方の温もりだけは、そこに。
僕が染めて、君が溶かした季節が
そこに。
 
 
思わず反らした瞳の中。真っ直ぐ僕を射抜いていました。
まるで本当の僕を探すかの様に、心の奥を見つめていました。