夢見桜
季節外れの夢見桜が、僕に儚い夢を届けてくれた。
それの訪れはいつも突然で。
 
今日も、僕の胸にツンと針が刺さった……気がした。
 
 
 
「夢見桜、か」
 
それが、夢で終わらない桜なら、甘い味でもするんだろう。
それはそれは虹玉みたいに甘く、コロンと鳴らして。
ああ貴方に会いたい、なんて無性に思うなんて。
その笑顔を見た瞬間に、ちくってさ?なんか只の乙女じゃん阿呆みたいな。
この夢幻想、夢物語をどうにかしてほしいくらいだ。自分では抜け出せないから。
 
「こんな冬近い季節に桜なんて咲くなよ」
 
雪じゃあるまいし、空をピンクに染めるだなんて。しかも散ってしまえば後は白く積もるだけなんて。
 
「なんであんなこと言うの?」
 
言葉が過去を呼び覚ます。思わせぶり、なんで僕の独りよがりだけどね。
 
 
いつもそうだ。
携帯も、過去も、桜の花びらも、全部あの川に捨てたいのに。またあの川の桜を付けて帰る。
今日もそうだ。
見上げた桜の木が他より大きくて、何故か単純に「これが夢見桜かあ」と納得。
それこそが夢だけど。夢なのだけれど。現実と思わされてしまう。
 
 
 
季節外れの桜が、普段通りの季節に咲きますように。
 
ふっと息を吹き掛け、知らず知らず持って帰ってきていた花びらを散らした。