誓いの冬

今までちっとも見やらなかった季節、

不意に掠めた空気の匂いが

僕に笑みを浮かばせた。

 

 

告げられたさよならに、

幾ばくもない日々を捧げた。

真っ白なシーツは、

触れれば凍てついてしまいそうな程に

冷たく体温を奪った。

そこにあるはずの影がないのはどうしてだろうか。

小首を傾げながらも歩いてみる。

 

弱く、酷く不安な孤独の世界。

何も見えないと嘯(うそぶ)いてきた。

本当は誰よりも分かってたじゃない、

誰よりも分かり易いから。

 

一緒に居た時間は見せ掛けという。

触れ合った温もりはフェイクという。

確かめた存在は空虚だという。

君は、 僕が遅刻をしたときのような諦め顔で

今も僕を見ているんだ。

 

幾度もない言葉の愛情表現。

視線を絡ませれば愛情表現にもなりうるのか、

そう言い聞かせながら逃れてきた。

 

目が沁みるのは青い空が眩しいから。

雪だってチラつくこの季節に、

身体中が凍てつく外に佇む。

僕ばかり責める青い空を覆ったならば

羽根のような白いものを降らせ。

睨みきかせつ、僕は叫んだ。

 

歌でも、話でも、

光を引き留めればよかったのだ。

拙いこの気持ちを、

あわよくば何も言わずにとしてきた。

それは違うと確信してたじゃないか。

何を因(よすが)としよう、この言いなりの声帯か。

 

良く見もせずに過ごした季節を

今更だけど見渡してみた。

赤い淡い焔が燃えたのがいつなのか、

心に問うても限りない。

いきり立つ風に打たれの、

過去だけを見続けた。

 

美しさの欠片もないと思うものか、

君と居た方が色褪せる。

嘘で己を固めて守る。

咲かぬ花の蕾にそっと

誓いでも立ててみようか、たまには。