堕とされた天使

渦巻くは、

同情。

 

 

見も知らぬ笑みに覆われて、

鼻をつんと衝く匂いが襲う。

手放す意識の微睡みを

第三者視点(そと)から見ているようだった。

 

背中が灼けるように疼くのは、

大きな羽が生えるからでしょ?

囚われの身も自らで、

飛んで切ってしまおうか。

 

だけども現実は重かった。

手枷、足枷 皮膚を斬る。

ならば四肢を焼き尽くし、

嫌でもここから逃げちまおう。

 

頭の端で絶望と諦めが膨らんで、

この逃亡計画に霞がかかる。

触れる数多の手が熱く、

出ない声で世界に叫んだ。

 

温度が沈めば扉を垣間見る。

凍てついた射るような目に

背中の芯がぶるりと震える。

その姿は真の貴方、鬼の子のよう。

 

発せられる言葉は見えぬ壁に弾かれ

此処までは届かない。

けれど二度目のその眼差しは、

冷めた身体を包み温めた。

 

したり顔で此方に来て、

泣きそうな顔で抱き締めて、

嬉しそうな顔でキスをして、

そんな貴方はヘンな人。

小汚い堕とされた天使に恋するなんて。